パグの育て方完全ガイド|しわの皮膚ケアと短頭種の呼吸管理
📓 取材ノート
「鼻のシワの間をちゃんとふかないと皮膚炎になるって、最初は全然知らなかった。毎日のケアが想像より大変でした」
——小林さん(パグ「ぶぶ」4歳・オス)
ふく(柴犬・6歳)とあん(柴犬・2歳)を育てている私は、パグを飼ったことがありません。この記事は、パグオーナーへの取材と獣医監修書籍をもとにまとめた育て方ガイドです。専門家やかかりつけ医の判断に代わるものではないことをご了承ください。
パグを初めて迎えるとき、多くの方が「かわいい顔に癒されたい」という気持ちで検討し始めると思います。しかしパグの飼育は、その愛嬌ある見た目の裏に、他の犬種とは異なる日々のケアが求められることも事実です。
今回は、パグオーナーの小林さん(ぶぶ・4歳・オス)への取材をもとに、パグという犬種の特性とそれに合ったケア方法を整理してみました。柴犬しか育てたことのない私が取材で感じた「柴犬とここが違う」という視点も交えながら書いていきます。
パグとはどんな犬か(柴犬との比較で理解する)
パグの起源はおよそ2000年以上前の中国とされています。皇帝や王族に愛玩犬として飼われていたとされ、その後ヨーロッパへ渡り、17〜18世紀にかけてオランダやイギリスの貴族社会でも人気を博しました。「ロータム・ムルトゥム・イン・パルヴォ(小さな体の中に多くのものを詰め込んだ)」というラテン語のモットーがパグのすべてを表しているとも言われます。
体重は6〜8kg程度、体高は25〜30cmほどの小〜中型犬です。短く平らな鼻、深い顔のしわ、丸みを帯びた大きな目が特徴で、表情がとても豊かです。毛色はフォーン(淡いベージュ)とブラック(黒)が主流で、どちらも短毛ですが意外と抜け毛が多い犬種でもあります。
柴犬と比べると、パグとの最大の違いは骨格と呼吸の構造です。柴犬は鼻腔が長く呼吸しやすい構造ですが、パグは鼻がつぶれた「短頭種」と呼ばれる犬種です。この構造上の違いが、温度管理や運動量の制限、そして健康上のリスクに直結します。ふくやあんはたっぷり運動しても息切れしませんが、パグは短い距離の散歩でも息遣いに注意が必要です。また、パグは顔のしわが多く、そのしわの間の湿気がトラブルを引き起こす点も柴犬にはない特徴です。柴犬を育ててきた私の感覚から言うと、パグはケアの種類がより多く、より細やかな観察が必要な犬種だと感じました。
性格は一般的に陽気でのんびり屋が多く、人間と一緒にいることを好む傾向があります。遊び好きですが激しい運動よりもそばにいることを喜ぶタイプで、穏やかな家庭に向いているといわれています。
パグが抱えやすい健康課題
短頭種気道症候群
パグのような短頭種に多く見られる健康課題のひとつが**短頭種気道症候群(BOAS:Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome)**です。鼻孔が狭かったり、軟口蓋(のどの奥の軟らかい部分)が長すぎたりすることで、呼吸がしにくくなる状態を指します。
症状としては、いびきのような大きな呼吸音、息切れ、運動後や興奮時の激しいあえぎ、場合によっては口を開けたままの呼吸などが挙げられます。軽度なものはパグの「普通の状態」に近いとも言われていますが、症状が悪化すると日常生活への影響が大きくなる可能性があります。気になるサインが続く場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談されることをおすすめします。
日常の管理として有効とされているのは、興奮させすぎない・長時間の運動を避ける・夏場の外出を最小限にするといったアプローチです。特に夏場の高温多湿な環境はパグの呼吸に大きな負担をかける可能性があるため、室内の温度管理は必須と考えて取り組むとよいでしょう。
色素性角膜炎
パグに比較的多く見られるとされるもうひとつの課題が**色素性角膜炎(ピグメンタリー・ケラタイティス)**です。目の表面(角膜)に黒い色素が沈着していく状態で、進行すると視野が狭まる可能性があります。
目が大きく顔から少し飛び出たような構造をしているパグは、角膜に刺激を受けやすい傾向があります。まぶたの形や鼻のしわが目に触れている場合などがリスクになる場合もあるとされています。早期発見のためには、定期的な目のチェックと、動物病院での定期受診が重要です。「目やにが増えた」「目が赤い」「目を気にしてこすっている」といった変化があれば、早めに獣医師へ相談することをおすすめします。
顔のしわ(皮膚ひだ)の皮膚炎
取材でまず小林さんが最初に語ってくれたのが、この顔のしわの皮膚炎でした。「最初は全然知らなかった」とおっしゃっていたように、多くの新米パグオーナーが見落としがちなポイントです。
パグの鼻まわり・目の下・口まわりには深いしわがあります。このしわの間には汗・涙・食べかすが溜まりやすく、放置すると湿気でカビや細菌が繁殖し、赤みやただれ(皮膚炎)を引き起こす可能性があります。症状が進むと強いにおいを発することもあります。毎日しっかりとふき取りを行うことが予防の基本です。
ひどくなってしまった場合は、自己判断での対処ではなく、かかりつけの獣医師に診てもらうことをおすすめします。
ケアの日課
パグの日課ケアは、柴犬のそれよりも種類が多いと感じました。以下に小林さんの「ぶぶルーティン」をもとに整理します。
しわの毎日ふき取り(所要時間:1〜2分)
ステップ1 清潔なウェットシートまたは湿らせたコットンを用意します。アルコール不使用・犬用のものを選ぶと安心です。
ステップ2 鼻の両わきのしわ、目の下のしわ、口まわりのしわを、シートで優しくふき取ります。奥の方まで届くよう、しわをそっと広げながら行います。
ステップ3 ふき取り後は乾いたコットンなどで水分を拭い、しわの中が湿ったままにならないようにします。湿気が残ると逆効果になる場合があります。
「最初はぶぶが嫌がって大変でした。でも毎日続けたら慣れてくれて、今は自分からじっとしてくれます」と小林さん。習慣化するまでの1〜2週間が勝負だそうです。
鼻孔チェック(毎日・朝の観察)
鼻孔(鼻の穴)の状態を毎朝確認する習慣をつけておくと、変化に気づきやすくなります。健康な状態では鼻孔がある程度開いていますが、詰まりや炎症、過度な分泌物などが見られる場合は注意が必要です。呼吸音がいつもより大きい、あえぐような息遣いをしている、という場合もかかりつけ医への相談を検討してください。
体温管理と熱中症対策
短頭種のパグは体温調節が苦手な傾向があります。特に夏場は熱中症のリスクが非常に高い犬種のひとつとされています。
- 気温が25℃を超える日はなるべく外出を控える
- 散歩は朝早いか夕方以降の涼しい時間帯に短時間で
- 室内ではエアコンで温度を管理(26〜28℃程度を目安にするオーナーが多いようです)
- 水はいつでも飲める状態に
「夏に少し長めに散歩させてしまって、帰宅したらぐったりして呼吸が荒くなって焦りました。それ以来、夏の散歩は必ず10分以内にしています」と小林さんは話していました。パグにとっての「ちょっとした散歩」は、私たちの感覚より短くなります。
冬も乾燥に注意が必要で、室内の湿度管理も大切です。
しつけのポイント
パグは一般的に人懐こく従順な面がありますが、頑固な一面も持つ犬種です。また、「ブヒブヒ」「グーグー」といった特有の鼻音は興奮時や要求時に出やすく、これをしつけで完全にゼロにするのは難しいのが正直なところです。
正の強化を基本に
パグのしつけはご褒美を使った正の強化が基本です。叱る・強制するアプローチはパグには合わない場合が多いとされています。座る・待つなどの基本的なコマンドは、おやつや声かけの褒めを使って覚えさせていきましょう。
パグは食への執着が強い犬種です。そのため食べ物を使ったトレーニングは効果が出やすい一方で、体重管理と合わせて取り組む必要があります。おやつを使いすぎると肥満につながるため、ごほうびの量は細かく調整するとよいでしょう。
おっとりした性格を活かす
激しく動き回ることより、人の隣でのんびりすることを好む傾向があるパグは、長時間のトレーニングセッションよりも短い時間を毎日繰り返すやり方が向いているといわれています。1回5〜10分のセッションを1日2回、という形でも十分な成果を得られるケースが多いようです。
「ぶぶはおやつ大好きなので、コマンドは比較的覚えやすかったです。ただ、呼吸が荒くなりやすいので、夏場のしつけはエアコンの効いた部屋で短くやるようにしています」と小林さん。
ブヒブヒ鳴きへの対処
要求鳴き(おなかが空いた・遊んでほしい)としてのブヒブヒは、無視→要求が通らないと学ばせるというアプローチが有効とされています。ただしパグの鼻音には健康上の原因(呼吸の苦しさ・痛みなど)が隠れている場合もあるため、急に音が増えたり大きくなったりした場合は、まずかかりつけ医に相談することをおすすめします。
迎える前に揃えておくもの
パグを迎える前に準備しておくと安心なグッズをリストアップしました。
- 犬用ウェットシートまたはしわケアシート — 毎日のしわふき取りに必須です。アルコール不使用の犬専用品を選びましょう。
- エアコン(室内温度管理) — パグに限らず犬の夏越しに必要ですが、短頭種のパグは特に優先度が高いです。
- ハーネス(胴輪) — 首輪は気道を圧迫するリスクがあるため、パグにはハーネスが推奨されることが多いです。
- 体重計(犬用または家庭用) — パグは肥満になりやすい傾向があります。定期的な体重管理のために月1回の計測習慣をつけましょう。
- 眼球用の点眼液(獣医師推奨のもの) — 大きな目が角膜への刺激を受けやすいパグには、目のケアグッズも用意しておくと安心です。かかりつけ医に相談して選ぶとよいでしょう。
- クールマット・冷感グッズ — 夏の暑い時期、屋内でも熱がこもりやすい場所での使用に役立ちます。
- 定期健診用のかかりつけ動物病院の確保 — 迎える前にパグの診察経験が豊富な動物病院を探しておくと、いざというときに心強いです。
よくある質問
パグの平均寿命はどれくらいですか?
パグの平均寿命は一般的に12〜15年とされています。ただし、短頭種特有の呼吸器の問題や肥満、皮膚のトラブルなどが健康に影響しやすい犬種でもあります。日常のしわケア・体重管理・定期的な動物病院での健診を続けることが、長く健康に暮らすうえで重要とされています。心配なことがあればかかりつけの獣医師にご相談ください。
パグの主な健康課題は何ですか?
パグに見られやすい健康課題としては主に以下の3つが挙げられます。
短頭種気道症候群(BOAS) は、鼻が短い構造から起きる呼吸のしにくさです。いびきのような呼吸音、息切れ、興奮時の激しいあえぎなどが見られる場合は獣医師への相談が必要です。
色素性角膜炎 は、目の表面に黒い色素が沈着していく状態で、進行すると視野に影響が出る可能性があります。定期的な目のチェックと健診が大切です。
顔のしわの皮膚炎 は、しわの間に汚れや湿気が溜まることで起きるトラブルです。毎日のふき取りで予防できる場合が多いですが、症状が出た場合は自己判断せず獣医師へ。
パグに向いている飼い主はどんな人ですか?
日々のしわケアや温度管理など、細やかなお世話を日課にできる方に向いていると思います。手がかかる分、それを楽しめる方、ルーティンを丁寧に続けるのが得意な方に合っている犬種といえるかもしれません。
また、パグは人と一緒にいることをとても好む犬種です。長時間留守にすることが多い環境よりも、そばにいる時間を確保できるライフスタイルの方のほうが、パグにとってもストレスが少ない環境になりやすいといわれています。
パグのケアで特に大切なことは何ですか?
取材を通じて感じた「パグのケアの三本柱」はこちらです。
1. 顔のしわの毎日ふき取り — 鼻まわり・目の下・口まわりを毎日ウェットシートでふくことが、皮膚炎予防の基本です。ふき取り後は乾燥させることも忘れずに。
2. 室内温度管理(特に夏) — 短頭種のパグは体温調節が苦手で、熱中症リスクが高い犬種です。夏場は26〜28℃程度を目安にエアコン管理し、散歩は涼しい時間帯に短時間で。
3. 体重の定期チェック — 食いしん坊なパグは肥満になりやすい傾向があります。体重が増えると呼吸への負担も大きくなるため、月1回程度の計測を習慣にしましょう。
いずれも「続けること」が大切です。ぶぶのオーナーの小林さんも「最初は大変でしたが、習慣になればそんなに苦でもなくなりました」とおっしゃっていました。
パグは、その愛嬌ある見た目と人懐こさで多くの人に愛されている犬種です。一方で、日々のケアと健康管理がしっかり求められることも確かです。小林さんとぶぶのケア記録から学んだことは、「知っていれば防げるトラブルが多い」ということ。迎える前にしっかり情報を集めて、日常ケアを習慣にしていくことが、パグとの豊かな暮らしにつながるのだと感じました。
気になることは必ずかかりつけの獣医師に相談しながら、パグとの毎日を楽しんでください。
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この記事を書いている人
久保里奈(くぼ りな・39歳)
神奈川県逗子市在住のフリーランスデザイナー。
柴犬「ふく(メス・6歳)」「あん(オス・2歳)」と暮らしています。
柴犬専門で10年、咬みつき癖や手作りごはんの試行錯誤の記録を綴っています。
タグ: #パグ#育て方#しわケア#短頭種#皮膚炎#熱中症